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EXHIBITIONS

デビュー15周年記念個展 釜 匠 「枠を組む」

2024.02.02 (fri) – 2024.02.19 (mon)
OPEN 13:00~18:00
※最終日午後4時閉廊
現在、この展覧会は終了しています。

「枠を組む」

2009年に「枠の中」というタイトルで初個展を開催させていただきました。
このタイトルにある“枠”というのは絵画作品と現実世界を仕切る境界線という意味で用いており、絵画というのはこの枠の中でのみ繰り広げられる空想世界であると考えてこのタイトルを選びました。

枠により現実世界と隔てられる事によって絵画作品は自由を得られるのだというポジティブなメッセージであると共に、実は、枠がなければ存在する事が出来ないという不自由さによるコンプレックスの表れでもありました。

そのコンプレックスを拭い去るため、当時の私は枠の中に沢山の事柄をこれでもかと詰め込んだ作品を制作していました。当時の私にとって絵画は「どのように描くのか」という自身の問答を一方的に詰め込むための箱だったのです。

それ故、自分と作品とのやり取りに終始してしまい、そこに鑑賞者が介入するという事はほとんど考えられていませんでした。そうして鑑賞者の前に現れた作品は、当然ですが「どのように描かれているか」という話に終始してしまいます。

この「どのように描かれているか」というのはあくまで技術論や方法論であって、作品そのものの中身ではなく表面の話であり、それ以上に話が発展する事は無いのだと気付いた当時の私は愕然としました。

「どのように描かれているか」という絵画の表層だけではなく「なにが描かれているか」という絵画の深層を考えていかなければ鑑賞者との対話さえままならないと気付き、ようやく自分の中にある実感を伴った言葉とは何かを探し始めました。

そうして、“自分と作品”という閉ざされた構造は“自分と作品と鑑賞者”という形へと変化していきました。作者がいかに作品に意図を込めて制作しても鑑賞者の視点を完全にコントロールすることはできません。それと同じく、鑑賞者が作品の意図をどれだけ完全に汲み取れたとしても、その向こうにいる作者本人を完全に理解することはできません。 かつての私はそれがとてももどかしく、すべてをコントロールしようと必死になりました。

しかし今はこのままでいいのではないかと考えるようになりました。作者と鑑賞者は常に作品を介して対話し続けることが出来るからです。2009年に初めて作品を発表してから15年間、画家としての釜匠はこの対話によって形作られ育まれてきました。

私は自分の作品を自分自身で完全に掌握しようとするのを止め、鑑賞者に委ねる事で共に作り出していきたいと考えています。そうすることで自分の作品の可能性は自分で広げられる限界を超えて拡張し続けるのではないかと思うからです。

鑑賞者との対話によって形作られ生まれた釜匠という画家は、もはや私から乖離して存在しています。

その釜匠という画家がこれからどのような作品を描くのかと考える時、私は自分が釜匠である事を忘れてとても楽しみに感じ、心の底からワクワクしてくるのです。

釜 匠